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社会貢献/任国事情

 任国事情(ブータン)

【2010年11月】
〜ブータン・地方行政支援プロジェクト〜
GNHと武士道:津川智明(元地方行政支援プロジェクト 専門家)

 私は2007年10月から3年間、ブータン地方行政支援の仕事をしてきました。プロジェクトをとおして国づくり・人づくりのために大切なことは何かを常日頃考えていました。第9次5ヵ年計画(2002年から2008年)あたりからブータン政府は地方分権化を促進し、これまでの中央政府主導の国づくりから住民主体の地方行政体(20の県と205の地区)主導の国づくりに大きく舵を切りなおしました。地方行政体に権限と予算を与え住民参加による地域開発が始まりました。政府はボトムアップによる地域開発を実施するために地方行政体関係者に対するさまざまな能力向上のトレーニングを行っています。それと平行して住民サービスを実施する拠点となる地区役場の建設や役場内の設備も充実してきています。さらにそこで働く人材も徐々に増えてきています。

 JICAプロジェクトは地方行政支援のなかで、地方行政体スタッフや村の代表者に対して人材育成のトレーニングを実施しましたが、トレーニングを受ける人たちに何かが欠けているように思えてなりませんでした。よくよく考えてみるとそれは国づくりに必要な人びとを突き動かす何かではないか、人びとの心の中から湧き上がるような何かが欠けていると思い始めました。

日本には「武士道」というのがあります。武士道は多くのことを教示していますが、そのひとつ「名誉」について以下の文章を見つけました。
 『武士が借金をした。借用書には次のように書かれていた。
  「恩借の金子御返済相怠り候節は衆人の前にてお笑いなされ候とも不苦候」(新渡戸稲造著「武士道」より)
  金を借りた人間が返さなかったら衆人の前で「笑われ」ても苦しからず、という借用書を書いて証文にしたのだから凄い。
  現代なら「笑われる」くらいで借金を返さず済むなら「いくらでも借りるぞ!」の世界であろうが、江戸時代の武士は「笑われる」くらいなら借金は返す。死んでも返す。といった心境を持ちつづけて生きていたのだ。
  笑われることは武士にとっては死に値する重大な事であった。武士は嘲笑される「恥」を「死」と同等においていた。そこには武士達の築いてきた恥文化があったのである。だからこそ、この借用文で商人は武士に金を貸したのである。笑われるという恥を許容できないのが武士であって、まことの武士ならば、貸した金は必ず返してくれる。武士達の世界の恥文化を、その階級において最下位におかれた商人達が共有したのである。そのような生き方が武士「道」として認知されて、はじめて「約束を守らなかったら、どうぞお笑いください」あなた様から笑われた自分は、もうこの武士の世界では生きていけません。潔く腹かき切って死にましょう。の世界を出現させたのだ。』
(江口哲夫の「おもいやりの世界」第14話から)
 私は、恥に対する気持ちが日本人の心の奥にへばりついており、これが江戸時代以降の日本の近代化、さらには戦後の復興および繁栄に多大な影響を与えたと思います。

 たかが「恥」、この一つの言葉が多くの日本人を突き動かし、戦争で完膚なきまでに叩かれた国土を奇跡とも言われる復興を成し遂げた核になったといっても過言ではないような気がします。
他人から施しを受けるのは「恥」である。だから一刻も早く自立しなければならないという心の叫びを多くの日本人は心のなかに持っていたのではないでしょうか。

 ブータンのこれからの国づくり・人づくりにおいて日本人の「恥」の文化に当たるようなものがどうしても必要であると思うのです。それはブータンの国づくりの核となっているGNH(Gross National Happiness)になるのでしょう。GNHは国づくりのためにブータンの人びとの心を突き動かすことができるでしょうか。できるようになるためには、GNHの考え方を具体的にカタチあるものとして行動で示さなければならないと思います。『幸せになるために何をすべきか、どうすべきか』ということについて具体的に行動することは口で言うほど易しいものではありません。それは自身の身を削らなければならないこともあるでしょう。それは身を粉にして働かなければならないこともあるでしょう。その苦労はどうしても避けられないことではないでしょうか。残念ながらこのことは地方行政体関係者への人材育成のトレーニングでは伝えきれませんでした。

 ブータンの人びとを突き動かすようなGNHは可能なのでしょうか。もしそうであれば、誰が、どのようにして具体化し、納得してもらい、動いてもらうようにするのでしょうか。数百年かけて作り上げられた日本の武士道、それを心の支えとしながらさらに100年をかけて築いてきた近代国家日本。ブータンの近代化は始まったばかりです。これからどのような国づくりがなされていくのか見ていきたいと思います。
 

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